私たちは、身体に不調を感じたり、仕事や日常生活で行き詰まったりすると、
「どうしたら改善できるだろう?」
「何をすればいいだろう?」
と、つい“何かをすること”に意識が向きます。
ストレッチをする。
運動をする。
深呼吸をする。
生活習慣を変える。
もちろん、こうした行動が役立つこともあります。
でも、その前にできる、とてもシンプルなことがあります。
それが、「観察すること」です。
●今の自分は、どんな呼吸をしている?
たとえば「呼吸」。
健康やセルフケアについて調べると、
「深呼吸をしましょう」
「腹式呼吸がおすすめです」
といった話をよく見かけます。
では、その前に一度、
「今の自分は、どんな呼吸をしているだろう?」
と観察してみるのはどうでしょうか。
呼吸は浅いのか、深いのか。
胸が大きく動いているのか。
お腹まで自然に動いているのか。
吸うほうが長いのか。
吐くほうが長いのか。
鼻から呼吸しているのか。
口から呼吸しているのか。
そして、仕事中、休んでいるとき、人と話しているときでは、呼吸はどう変化しているのか。
無理に深くしようとしなくても大丈夫です。
まずは、ただ気づいてみる。
それだけでも、
「忙しくなると呼吸が浅くなっているな」
「集中すると息を止めるクセがあるな」
「家に帰ると自然に力みが抜けるな」
など、自分について今まで気づかなかったことが見えてくることがあります。
●身体は、いつも何かを伝えている
呼吸だけではありません。
姿勢、身体の力み、肩の位置、歩き方、食欲、眠気、疲れ方、気分の変化。
普段は当たり前すぎて意識していないところにも、今の自分を知るヒントがあります。
肩が凝ったから、肩だけを見る。
腰がつらいから、腰だけを見る。
それも一つの見方ですが、少し視野を広げて、
「この症状が出ている今、自分全体はどんな状態なんだろう?」
と眺めてみる。
すると、身体だけではなく、
最近忙しかったこと。
睡眠が少なかったこと。
考え事が増えていたこと。
食事が乱れていたこと。
いつもより呼吸が浅かったこと。
そんな一見関係なさそうな出来事が、少しずつつながって見えてくることがあります。
症状そのものをすぐに消そうとするのではなく、症状もまた自分の状態を知るための一つのサインとして眺めてみる。
そこから、身体との付き合い方が変わってくることもあります。
●東洋医学・陰陽五行にもある「全体を見る」という視点
東洋医学や陰陽五行では、人の身体を部分だけで切り離して考えるのではなく、身体全体のつながりや、季節・気候・食事・感情・生活などとの関係性をも大切にします。
陰と陽も、どちらか一方だけが良いというものではありません。
活動する時間があれば、休む時間がある。
緊張があれば、ゆるむ時間がある。
外へ向かうときがあれば、内へ戻るときがある。
大切なのは、「どちらが正しいか」ではなく、
今、自分はどちらに傾いているのか。
その状態に気づくことです。
陰陽五行という考え方も、自分や自然を決めつけるためではなく、変化を観察するための一つの“ものさし”として眺めてみると面白いものです。
季節が変われば、自然の状態も変わります。
自然が変われば、私たちの身体や心にも変化が現れることがあります。
自分を観察することは、自分だけを見ることではなく、自分と自然との関係を眺めることでもあるのかもしれません。
●「気づくこと」が、変化の入口になる
観察することの面白さは、身体だけにとどまりません。
「なぜかこの場面では焦る」
「この人と話すと身体に力が入る」
「この仕事をしているときは時間を忘れる」
「最近、前より自然を気持ちいいと感じる」
そんな小さな変化に気づくことが、
仕事の行き詰まりを切り抜けるヒントになったり、
人間関係を見直すきっかけになったり、
自分が本当に大切にしたいものを知る入口になったりすることもあります。
自分を変えようとする前に、自分を観察してみる。
自然や世の中についても、すぐに答えを出そうとせず、淡々と眺めてみる。
そうしていると、ときどき、
「あ、もしかして。」
と、今まで見えていなかったものがふっと見えてくることがあります。
●まずは今日の呼吸から
難しいことをする必要はありません。
今、この文章を読んでいる自分が、
どんな姿勢で、
身体のどこに力が入っていて、
どんな呼吸をしているのか。
少しだけ観察してみてください。
そして、
「良い呼吸にしなければ」
「姿勢を正さなければ」
と、すぐに直そうとしなくても大丈夫です。
まず、気づく。
そこから始めてみる。
身体を整えることも、自分自身を知ることも、案外そんな小さな観察から始まるのかもしれません。