私たちは毎日、当たり前のように身体を動かしています。
寝返りをする。
布団から起き上がる。
椅子から立つ。
そして、歩く。
あまりにも自然に行っているため、普段は「どうやって身体を動かしているのか?」なんて考えることは少ないかもしれません。
でも、こうした何気ない動作を少し丁寧に観察してみると、人間の身体はなかなか面白い仕組みで動いていることがわかります。
今回は「起き上がり」という動作から、身体と自然の力について考えてみたいと思います。
仰向けに寝た状態から身体を起こそうとすると、
「腹筋を使って身体を持ち上げている」
というイメージを持つ方もいるかもしれません。
もちろん、筋肉の働きは必要です。
ただ、実際の起き上がりでは、筋力だけで身体を持ち上げているわけではありません。
たとえば、
寝返りながら身体を横へ向ける。
肘や手を床につく。
そして、床を押しながら身体を起こしていく。
この一連の動きのなかでは、身体の重心を移動させながら、床との間に生じる力も利用しています。
つまり起き上がりとは、
「筋力だけで頑張る動作」ではなく、「重心と力の方向を利用する動作」
とも見ることができるのです。
ここで登場するのが「床反力」です。
私たちが手や足で床を押すと、それに対して床から身体へ力が返ってきます。
立っているときも、歩いているときも、私たちは常に床との間で力をやり取りしています。
身体を動かすというと、どうしても「筋肉が力を出す」という身体内部の働きに目が向きやすいものです。
しかし実際には、
身体の内側で生み出す力と、身体の外側から受ける力。
その両方との関係によって、人間の動作は成り立っています。
もうひとつ面白いのが、重心移動です。
たとえば起き上がるとき、身体を真上へ力任せに持ち上げようとすれば、大きな力が必要になります。
ところが身体の向きを変えたり、重心を移動させたり、腕で床を押したりすると、身体を起こしやすくなります。
ここには、
「どれくらい強い力を出せるか」
だけではなく、
「どの方向へ身体を動かすか」
「どこへ重心を運ぶか」
「どの方向へ床を押すか」
という要素があります。
身体は、ただ力を出しているのではなく、力の方向を上手に利用しながら動いているのですね。
ここからは、少し視点を広げてみます。
自然の力というと、
水力。
風力。
火力。
そんなものをイメージするかもしれません。
でも私たちの身体に常に作用している「重力」も自然界に存在する力です。
そして私たちは、その重力のなかで床と接し、床から受ける反力を利用しながら動いています。
そう考えてみると、
人間は自分の筋力だけで動いているのではなく、周囲に存在する力との関係のなかで動いている。
そんな見方もできるのではないでしょうか。
私はこれを「自然がもたらしてくれる恩恵のひとつ」として眺めてみると、とても面白いなと感じています。
これは起き上がりだけの話ではありません。
椅子から立ち上がるときにも、重心を移動させながら床を押しています。
歩くときにも、重力や床反力、身体の慣性など、さまざまな力との関係のなかで身体は前へ進んでいきます。
寝返る。
起き上がる。
立ち上がる。
歩く。
何気なく行っている動作を丁寧に観察してみると、
人間の身体は、自然界に存在する力から切り離されて動いているわけではない。
むしろ、その力と関わりながら動いていることが見えてきます。
身体の使い方を考えることは、自分の身体だけを見ることではなく、
「自分の身体と周囲の環境が、どのように関わっているのか?」
を観察することなのかもしれません。
普段何気なく行っている「起き上がる」という動作。
そんな当たり前の動作にも目を向けてみると、身体について、そして自然との関わりについて、新しい発見があるかもしれませんね。